LAST AND START
LAST AND START
2008年秋…
これはフィートをボスとする、テン達が白軍を成す前の旧白軍の話…
フィートはこの旧白軍の一員であった…
当時、この軍は8人のみで成っていた…
その中の一人が、フィートであった…
この時、フィートは短剣を使って戦う戦士として、貢献していた。
そして、他のメンバーが…
「おい…あそこだ…黒軍が攻めて来たぞ…」
「あぁ、分かってる。どうする、お前が行くか?」
「いや、あの数では俺の武器じゃぁ面倒だ…イェル、お前のその武器の方が効率がいいだろう…」
「…だよな。行ってくる。」
…彼、イェルは、身体に輪のようなものを着けていて、それを武器としている。
そこから四方に一気に攻撃を発射する、という大人数に対してでは効率のよい武器だ…
だが飽くまで横周り、だけ…
空中からの攻めには効率の悪い…
「あっ…やばい…残った奴が上から…!イェル…!」
パァンッ
一つの銃声が鳴り響く。
「間に合ったか、イェル…危うくお前を失うところだった…」
「…助かった。ヴドゥルフ。」
ヴドゥルフ。
彼は二つの銃を併用する。
そして左目に装着しているディスプレイのようなレーザーポイントで銃の焦点を合わせて確実に撃つ、銃の腕が最高な奴だ…
だが彼も大勢の敵には手を回しきれない、という欠点があった…
「おぉ、フィート…お前そこにいたか。」
「…あぁ、悪りぃな、助けられなくて…」
「大丈夫だ、ところで他はどうだ…?」
「聞いてみねぇと分からねぇな…」
ここで、ヴドゥルフが無線を取り出す。
「あぁこちらヴドゥルフ。ワン…そっちはどうだ?…あぁ、分かった。一度フィアラルティリアタワーへ戻るか。」
「…どうだ?」
「大体もう倒したし、大丈夫だそうだ。一度フィアラルティリアタワーへ戻るぞ…」
今の無線の相手、ワンは長剣をとても素早く使う、この団体内でボスに次ぐ、最も頼れる戦力の持ち主だ。
彼は今後の白軍にもとても役立ちそうだ…
「…着いたな。」
…此処が俺等の基地、フィアラルティリアタワーだ。
此処はボスの名に因んで付けられた、何ともシンプルな名だが…
「よぉ、フィート、イェル、ヴドゥルフw…そっちは大丈夫だったか?w」
「あぁ…ワンか。何とかな。結構一気に大勢襲って来たもんで、イェルが結構役に立ったよ。まぁこっちは意外と手薄だったみたいだしな。」
「そうかwこっちはな、次々に黒軍がうじゃうじゃ出て来て面倒だったぜー…まぁ結構手下の方なんだろうがなw」
「いやぁ、殆どワンとヴァルヴァートがやってくれたんで助かりました。彼等はやっぱり凄いです。俺の攻撃じゃまだまだ…」
「いやいやよせやい、ベット…w」
「…フンッ、俺、ヴァルヴァートにかかればあれくらい余裕、ってよw」
ベット…ヴァルヴァート…
ベットは腕にエネルギーを蓄え、それぞれ両手にコードが繋がっており、掌から波動が出せる。
だがエネルギーは対戦前に蓄え、戦闘中は蓄えられないため、有限だ。
ヴァルヴァートは背中から4本の鋭い棒…のようなものが出、それで四方の相手を突き抜く。
これに至っては死角はあまりない。
まぁあのワンとヴァルヴァートが前に出れば、敵はひとたまりもないだろう…
…流石だ。
「じゃあ、ボスさんのところへ報告と行きますか…w」
「あぁ…」
フィアラルティリアタワー最上階。
此処がいつものボスの居場所。
「ボスさん…フィート、イェル、ヴドゥルフ、ワン、ベット、ヴァルヴァート帰りました。」
「…おぉご苦労…」
「あ、キリアもそこにいたんですね。」
「あ、あぁ、ちょっと今後の作戦も兼ねて、な。」
キリア…彼は栄養失調で左足に付けたものから点滴を受けている。
そして口が不自由…喋る事も不可能…
だが武器は一本の棒としており、ワンのようにとても俊敏な動きで相手を突いていく。
彼も凄い戦力の持ち主だ。
そして俺等のボス、フィアラルティリアさん。
ボスは俺等の技をみんな使える、というなんとオールマイティな方だ。
どんな経緯でこんな事ができるようになったのか…
まぁ、これで俺等のメンバーは全員だ。
日々襲ってくる黒軍を退治しているが、奴等は攻撃が絶えない。
俺等と違ってそこそこ人数はいるようだが、襲ってくるのは下っ端ばかり。
俺等を倒したいのなら何故…
まさか何か巧妙な作戦でも…
…まぁこうして、俺等はいつも、こんな風に黒軍の退治に専念している。
黒軍の目的が読めないが…
…そんな中、ある日…
俺等は全員、ボスに招集された。
「…あ、今回の招集の件だが…残念なお知らせだ。俺達の団体の一人、ワンが脱退する事となった。」
「…へへっ…悪りぃな…w…ちょっと…俺の方の事情で色々あって、他に行く事になったんだ…」
「…という訳だ。名残惜しいが、仕方ないな。」
「…ワン…」
こうして、ワンは脱退、残った7人での団体となった…
そして…暫く黒軍の退治は続いた…が…
急にとある緊急事態が起こった。
なんと、戦いに出てたキリアの栄養補給の部分が割られ、栄養失調で倒れた。
取り敢えず病院に運ばれたが…
脈は停止、瞳孔は開き、息もない…
残念だが………
だがその日、その事態の直後。
なんと他の戦士も次々と惨殺…
ヴドゥルフは心臓を突かれ、ベットはエネルギー部分を破壊、手首を重点的に刺されていた…
そして、異変に感じた俺、フィートはフィアラルティリアタワー周辺を探すと…
「…フィー…ト……!」
「…イェル…!どうした…!?お前もか…!?」
なんと、弱点を突かれたのか、上方から頭蓋を打ち抜かれていた。
「イェル…だ、誰だ…!?黒軍…か…!?」
「…ち…違う…黒軍…じゃな…い…敵は…」
…此処まで言い、イェルは意識を落とした…
「イェル…イェル…!」
…俺はイェルの身体を触れたが…
脈が…ない。
「な…何だ…!?誰なんだ…!?黒軍…じゃない…って事は…裏切り…!?ワン…いや、ボスは違うだろ…まさか…ヴァルヴァート…!」
俺はフィアラルティリアタワーを駆け上った。
何だ、何が起こったんだ、こんな時に…
まさか…黒軍が俺等を抹殺する作戦って…!
…俺はフィアラルティリアタワー最上階へ着いた。
すると、何かが倒れる音が。
ドサッ…
恐る恐るドアを開けた俺の目には…
「ボス…!」
いや…それよりもその近くに立つ姿…
ヴァルヴァートだった。
「…フンッ…まさか自分から来るとはな…まぁいい、此処がお前の墓場だ。」
「ボス…!…ヴァルヴァート…!何が目的で…!」
「…分かんだろ、裏切りだ。俺は黒軍の仲間だよ。お前等を抹殺するために白軍の一員を装い、送り込まれた。そして皆がなるべく一人ずつになった時を狙った、って訳だ。ワンを採り逃がしたのは納得いかないがな。さぁ、後はお前だけだ。…フッ…w」
「貴様っ…!」
この時、俺は何を思っただろうか…
裏切りに我を失ったのだろうか。
ただただ俺は、この裏切りを倒すためだけに一心不乱に…
獲った…
ボスさんを倒されたのに酷く腹を立てたのか…
俺本人にも分からない。
ただただ俺は…
目が覚めると…足元には倒れたヴァルヴァートが転がっていた。
ボス、フィアラルティリアを倒され、俺は強く誓った…
俺もボスみたいな…白軍という団体を継いでいきたい…
この白軍を終わらせてはいけない、そう思った。
この事件は…とてもとても…俺にとっては残酷であった…
こうして、この白軍は解散せざるを得なくなったのだ…
その後、俺はメンバー全員を病院に運んだが…ヴァルヴァートは途中で失踪、ボスは意識不明の状態、他のメンバーは全員、亡くなった…
ヴァルヴァートは一体…何処へ行ったのか分からない、が…
またこっちの抹殺を企むであろう、な…
フィートがフィアラルティリアを病院に運んで数日…
フィートのいない病院での医師達は…
「フィアラルティリアさんはまだ意識不明か。」
「えぇ…この数日、ずっと…」
「にしても裏切り…とは…酷いものだ…」
「そうだな…」
「フィアラルティリアさん、入りますよ…!?」
「どうした!?」
「フィアラルティリアさんが…いない…!」
「何っ!?」
「す、すぐにフィートさんに連絡を…!」
「待て!…今、彼にフィアラルティリアさんの失踪を伝えれば…彼はすぐにでもフィアラルティリアさんを探しに向かう。そうすると彼に何があるか知れん。しかもましてや失踪など、我等医師達の信用にも関わる…!」
「だが一体どうすれば…」
「…少し頂けないが、こうするしか…」
「先生!」
「フィートさんですね…?」
「あ、はい!…あの、フィアラルティリアさんの容態の方は…」
「残念ですが…」
「えっ…?」
「…お亡くなりになりました…」
「…!?」
「…すみません、我々も精一杯手を尽くしたんですけれど…申し訳ございません…」
「…いいんです…覚悟はしてましたから…はい…」
こうして…フィートの所属する、旧白軍はなくなった…
そしてすぐ、彼は新たな白軍を結成する、ボスとなる事になるのだった…
フィートはこの時、丁度…「裏切りを見抜く」能力を手にした。
END